「今春の高校入試の概況(2)」(都立編②)

都立一般試験

 ①出願傾向
 一般試験の最終応募倍率は1.39倍で前年度(1.37倍)より0.02ポイント上がっています。応募者が定員に達しなかった全日制の学校は、普通科16校(前年度26校)、専門学科25校(前年度29校)と減少しました。
 男女合同募集の普通科の倍率は1.47倍で前年度(1.46倍)より0.01ポイントアップしました。コース制、単位制普通科においても倍率は上がり、普通科全体では1.45倍、前年度(1.44倍)からわずかに上がりました。
 専門学科では募集人員の3分の1を占める工業科が前年度の0.74倍から0.79倍へとアップ、商業科は0.96倍から1.02倍へアップするなど、倍率上昇となる学科も見られたものの、農業科や科学技術科や家庭科などの倍率が下がる学科もありました。専門学科全体としては前年度の1.01倍から1.03倍へとアップしています。
 また、昼間定時制の1.12倍は前年度(1.05倍)からアップ、チャレンジスクールは1.38倍で前年度(1.42倍)からダウンとなりました。

 ②英語スピーキングテスト(ESAT-J)
 中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)が実施されて2年目となりました。8割以上の受験者がC以上の評価でした。(評価は、A:80~100点、B:65~79点、C:50~64点、D:35~49点、E:1~34点、F:0点です。)平均スコアは65.2点、前年度より4.7点上昇しました。2年目ということもあり、全体像が見えていることで受験生が対策を打つことができたものと思われます。また、練習教材(都のホームページ、過去問、模擬テストなど)が増えたことも平均点アップの一因と考えられます。実際、当塾でも数回にわたって対策授業を行いましたが、回を重ねるごとに生徒たちは要領をつかんでいき、正答率もどんどん上がっていました。

 ③高倍率になった高校
 男女合同となった学年生普通科でもっとも高い倍率になったのは、豊島で2.27倍でした。豊島は前年度も男女ともに2倍を超えていました。2021年に新校舎になって以降、倍率は2倍を超えています。次いで広尾2.16倍、青山2.07倍、本所2.01倍、向丘2.00倍と続きました。広尾は前年度男子2.06倍、女子2.49倍と非常に高く、女子において最も倍率が高かった学校でした。
 単位制普通科の新宿は2.42倍と高倍率となりました。2.4倍台は7年ぶりです。新宿は推薦入試の倍率も7.66倍でトップとなっており、高い人気を得ていることが分かります。総合学科のトップは前年度と同じく晴海総合で2.15倍でした。4年連続で増えています。次いで杉並総合が1.66倍となりました。

 ④一般合格者の状況
 全日制全体の合格率は74.2%(前年度74.0%)、不合格者数は前年度(10,289人)より229人減って10,060人となりました。
 男女合同の募集となった普通科の実質倍率は1.39倍、合格率72.1%となりました。前年度は受検倍率が男子1.34倍、女子1.40倍にも関わらず、合格率は男子70.4%、女子が73.3%と男女の合格率が逆転していました。男女別定員緩和措置の割合が10%から20%になったことによって合格者中の女子の割合が上がった学校が多かったためです。今年度は男女合同のため内訳は不明ですが、都教育委員会の資料等が今後どのような発表のされ方になるのか注目です。
 男女合同の普通科の合格率を学力別に見ると、最も合格率が低い(競争が激しかった)のは偏差値50~54の層でした。これは前年度の男子と女子と共通しています。2022年度は合格率の最も低かったのが男女ともに偏差値55~59の層だったことを考えると、全体的に安全志向になっていることがうかがえます。さらに、偏差値40~44の層の合格率(79.9%)も前年度(男子80.3%、女子81.9%)より下がっていることから、その層にも移動が起きていることが考えられます。
 コース制の合格率は67.16%(前年度76.0%)、単位制普通科は74.56%(同73.0%)で、コース制は競争率が上がり、単位制普通科は緩和されました。
 一方、専門学科は商業科が95.27%(前年度98.7%)と3年連続で非常に高い合格率となったほか、工業科91.9%(同94.6%)、農業科86.8%(同89.2%)、産業科91.93%(同97.2%)など、主な専門学科はいずれも昨年度より競争率が高くなったとはいえ、かなり高い確率で合格できる状況が続いています。総合学科は78.97%(同81.8%)で前年度より厳しい入試となりました。